ちん婆、マンボウ男さんの忘れ物を届に行く

ちん婆

2009年12月02日 07:06

前回の「馬」にて、

マンボウ男さんの忘れ物を届ける事になった私は、

撤収後、

車を宮城県に向けて走らせました。

何を届けるのかって?

それはマンボウ男さんの仕事道具。


これは、

両端にワイヤーを取り付け、
背後から対象者の首に引っ掛けて、
クロスさせるように回り込み、
対象者を背中と背中を合わせた形で、
おぶるようにした後、
腕を伸ばしてワイヤーを締め、
相手を窒息させるための暗殺用の道具の一つ。


続きは、

↓コチラから (((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル
「馬」での楽しい時間は、
朝食のひっぱりまでだった。

後片付けをしながら、その所有者不明の黒いポーチが目に留まる。
「これ、誰のですかね?」
「中身は....何?」
「なんですか、それ?」
その中身を見た瞬間、私は凍り付いた。
まだ誰も気が付いていないようだが、
それは、IRAの連中が好んで使う暗殺用の道具だった。
音も無く忍び寄り、
対象者を抹殺し、
偽装工作も容易。
(なんでこんなものがここに...?)

この寒空の中、
好き好んでキャンプをするという変○中年男達の集まりには、
まったく不要であり、最も似つかわしくないモノ。
私の正体を知り得た人間が、
私を殺るために用意したものなのか?
いや、
もはやそう考えなければ辻褄が合わない。

「誰のでしょうね?」
その場にいた誰かのものでは無い。
誰にも悟られずに私を殺るためには...
依頼者は誰か分からないが、
全員がそうなら今頃私は死んでいる。

暗殺者が一人だとして消去法でいくと、


R氏、旧KGBの人間だが、
殺るなら朝のティータイムの時にやれたハズだ。

Rママ氏は夫の前職を知らないはずだし、
それ以前に殺れる時間が無い。

はっち夫妻とは朝と夕方しか一緒に過ごしていないから無い。

zuka氏は温泉道中、自分はモサドだと告白してくれた。
ならば私を殺る理由が見つからない。

つむじ君、Rお姉ちゃん、R弟君、子供には無理だ。

ジープ氏。一番最初に帰ったので無いだろう。
だとしても就寝中にチャンスはいくらでもあった。

ギター氏もやるつもりなら朝の唐松観音で殺れたはずだ。

K本氏、現職のMI6のメンバーだが、
zuka氏同様に理由が無い。

K本氏の友人はあの状況では無理だ。

O西君...良く考えればタイミングが良すぎる。
「馬」に送り込まれたキムヒョンヒか?
限りなく怪しいが、状況的に考えてあの場では無理がある。

となると、
残るは...マンボウ男!?
いや、とぼけた顔をしたせのきん氏か?



せのきん氏がマンボウ男に電話して、
その所在を確認してみる事に。
ん?
ナゼせのきんさんが電話番号を知っている?
やはり仲間か?内通者か?

「...そーですか、それじゃ、どうします?」
「はい、はい」
「牛には...はい、50%?、微妙ですか...」
「...さん...帰りに...聞いてみますよ」

せのきんさん、ナゼそんな目で見る...

「ちん婆さんが帰り足に届けれくれるそうですよ」

話の流れでそう決まった。
いや、決められた。
特段に断る理由もないので拒否は出来ない。
私がいくしかあるまい。
それに、彼が本当にそうなのかを確かめるチャンスだ。

携帯の赤外線でマンボウ男さんの番号やメルアドを転送してもらう。
と同時にマンボウ男さんの人相を私に伝える。
せ「本人は、阿部サダヲとか人を殺した事がある時任三郎なんて言ってるけど」
せ「どー見ても、ジャックバウアーのものまねをする芸人にしか見えないんだよね」
私「.........たいがー・リーの方がまだ気が楽ですよ...(リンリン♪)」

その後せのきんさんは"人妻との合コン"と称する会合に向かうために、
帰っていった。

残された私。
とりあえず忘れ物を届けにいく事を伝えておこう。
もし、彼が私の思う様な暗殺者だとして、
人違いで誰かが犠牲になる事は避けなくては。
そのために...
私は自分撮りした写真をマンボウ男さんに送った。
「こんなヤツが行きます...」


彼からの返信は...
「3時までなら職場にいます」


撤収後、
私はせのきんさんとの約束を果たしにある場所へ向かう。
その約束とは、
人妻達数人と山奥の炭焼き小屋で合コンいも煮会をするというもの。
少々季節外れだが、
前から約束していたもので、
「馬」の後に寄っていきませんかとお誘いを受けていたのだ。

もし、せのきん氏が"協力者"だとすれば、
私が尋ねた時にはっきりするだろう。
待ち合わせは、人里離れた山奥の炭焼き小屋なのだから。

フェロモンとキャラメルミルクの匂いを頼りに、
指定された場所へと向かう。
誘われるままに小屋へ。

そこでは、麗しき人妻達が囲炉裏を囲んで楽しげに会話を楽しんでいた。
ついでに子供達数人も...。

傍らにはBDU(Battle Dress Uniform)姿のせのきん氏が...
何故そんなにスッキリした顔をしている?

まさか、こ、子供達の目の前で...

皆と一緒にいも煮と焼き肉を御馳走になる私。
肉が堅いからと食べるのを拒否する子供。
野菜が食えないと逃げ出す子供。
ニンテンドーDSに完全に取り憑かれている子供。

そんな子供達相手に、
ニヤニヤしながらポップコーンを作り始めるせのきん氏。
「フタ、取っちゃう? ( ̄∀ ̄*)イヒッ」
あの時の再来か!?

意外にこの人物、子煩悩なのかもしれない。
奥様にもお会いした。
もちろんお子さん達にも。
あの男の内通者と言えども、
普段の生活では良き父親なのだ。

思いがけない昼食を御馳走になり、
このままとどまっていたかったが、
今は、一刻も早くあの忘れ物を届けなくてはいけない。
タイムリミットは午後3時だ。

「御馳走様、今度は子供達のいない時に...♡」
と挨拶を交わして、外に出る。

ふと視線を感じて山の稜線を伺うと...

何やら動物らしき物体がこちらを凝視しているではないか!


咄嗟に身を屈めて防御態勢をとる。
現役を退いたとはいえ、
訓練で叩き込まれた動きは体が覚えていた。

なんだあれは!!
まるで"もののけ姫"に出て来るイノシシの皮をかぶった狙撃手のようだ!

ヤツが本命か!?
まだ見ている...。


子供達を呼んで、陽動作戦をとる事にした。

この距離なら、
スナイパーライフルの
SR-25をもってしてもピンヘッドは難しいだろう。
それに、無関係の民間人(しかも子供)の前では手を出せまい。

「写真撮ってあげるから、おいで〜」


「こっち見ろ〜(って、あっち見るな!)」



またの再会を約束し、私はその場を立ち去った。

残るは、あの男。


国道48号線を上り関山峠を目指す。
たしかここにも旧国道と旧関山隧道が眠っていたはずだ。
散策は次回に回すとして、
さて、
現地で彼と対峙した時、私は平静を装えるであろうか?

暗殺道具はダッシュボードの上に置いてある。
それを元カンパニーの私が届けにいく。
考えてみればおかしな構図だ。

米ソの冷戦が終結し、
IRAの様なテロ組織が暗躍する時代。
世界の裏側ではまだ戦争は終わっていないのだ。
特に、このスパイ天国と呼ばれる日本においては。

車は順調に走り、
ナビによれば3時前には到着する旨の表示。

一度電話を入れて様子を伺おう。
私「○○さん(おそらく偽名)の携帯電話ですか?」
 つとめて平静を装う。
マ「はい。わたくしが○○です。」
私「あ、ちん婆と申しますが、忘れ物を...」
 「今、愛子手前のホテル コ○チェルト付近ですので」
 「3時くらいには着けると思います。」
マ「はいっ。大丈夫ですよ、お気を付けて」

なんだ、
なんなんだ、この違和感は!!

想像よりも声質が高い。
いかにも腰の低い営業マンと言った感じだ。
丁寧な言葉使い、
それでいて、
相手に己の心中を微塵も感じ取らせない無駄の無いやり取り。
私は今から現役のプロと対峙しようとしているのか?

愛子を抜け、
間もなく仙台市内へ入る直前だった。

私の太ももに激痛が走る!
ック!こんな時に!

右太ももに"こむら返り"が起こったのだ。
ナゼ?しかも今は、運転中だぞ!!
はっ!
あの時のいも煮か!?
内通者であろう、せのきん氏に一服盛られた??

兎に角、応急処置を施さなければ...
太もものこむら返りは、
ふくらはぎに比べて何倍もダメージが大きい。

痛てぇぇぇぇ

コンビニの駐車場に車を滑り込ませ、
車外に飛び出した私は必死の形相で太ももを伸ばす。
店から出て来た女子高生がいぶしげな表情で私を見つめる。
そんな顔で見なくても今の私は十分に怪しい。

すでに時刻は3時を回っている。
マズイ。

なんとか体勢を立て直した私は、
約束の場所へと急ぐ。
ナビによれば数分で到着する距離だ。
遅刻するのは忍びないが、わざとではない。
いや、
そもそも暗殺者に対して、
申し訳ないと思っていること事態間違った判断だ。

オフィスビルが建ち並ぶ一角に、
男から指定された場所はあった。
車を裏手に止め、
周囲に怪しい人影がいないかを確かめる。
エントランスから中へ入ると、
そこには街の騒音から隔離された空間が広がっていた。
ロビーの奥に受付のカウンターがあり、
受付嬢が2名。上品な笑みを浮かべて座っている。

馬で受け取ったメールには、
「受付で、1番人相の悪いヤツを出せ。と言えば私が出て行きます」
と書いてあった。

もしも私が本気でそのセエリフを言えば、
間違いなく警備を呼ばれるだろう。
最悪逮捕だ。
そう、
私は試されている。

カウンターに近づき、
受付の一人に、
「あの、1番人相の悪いヤツ○○さんはいますか?」
ショートカットの受付嬢は一瞬、変○でも見るような目付きで
私を一瞥した後、
「少々お待ち下さい」
極めて事務的な対応で電話に手を伸ばす。
.....
プロはそうあるべきなのだ。


男を待つ間、
壁に飾られている一枚の絵を見る。
題名は、
エッシャーの「Waterfall (滝)」


この無限に続く永久機関のごとく、
この先の状況を如実に物語っているのではないかと、
思い描いてしまう。


「お待たせ致しました」

相手を不快にさせない程度の微笑みを浮かべて、
どきどきキャンプのジャック・バウアーは現れた。


歩いて近づいて来るその出で立ちは、
間違いなく訓練されたものだ。
その証拠にスーツの左側は、不自然に膨らんでいる。
これは、
左脇のホルスターに拳銃を忍ばせている事を意味する。
素人目にも分かるようにしているのは、
"いつでもアナタを撃ち殺せますよ"という警告なのだ。

私「はじめまして、ちん婆と申します」
ジ「マンボウ男です。あなたがちん婆さん」
私「どうも...これ、ですよね。」
マ「良かったら何か飲みませんか?まぁ、座って...」

スレンダーな眼鏡美人がお茶を持ってきた。
彼女が立ち去るのを待って、
私は核心に触れる話を切り出した。

私「それ、ワイヤー使って....するやつですよね?」
マ「お分かりですか?」
私「まぁ、一応...」
マ「これはいい。短時間で仕事を終えられる。」
 「何にしてもかさばりませんからね。」
私「今回の対象は私ですか?」
マ「まさか!対象は別にいます」
私「別に?」
マ「それは....」





ほどなくして、
お互いに裏の顔を語り合った後、
ロビーには卑猥な笑い声が響き渡っていた。





マ「.....だったんですよ、いや〜正直凹みましたね」
私「以前、ハチミツを使ったパ○ズリっていうコメがあって....」

 ..................

マ「そう言えば禁止文字が設定されましたね」
私「あ、そうそう!」
マ「これじゃ変○とか打つのが面倒くさくないですか?」
私「エ○スもブロックされてたね」
マ「エン○ウとか2諭吉とかもダメ?」


そんな話で、
初対面の私たちは小1時間ほどの会話を楽しんだ。
もっとも、
周囲を憚らずにパイ○リの話をする、
二人の声を聞かされていた受付嬢達は、
軽蔑の念でこちらを見てはいたが...

帰りがけに、
名刺の代わりに持ち歩いているドリンクをプレゼントした。

彼は某国政府の機密を扱う部署に勤めているので、
顔はおろか、その場所すら特定されてはマズイそうだ。

(写真はもしもの時に担保にするために撮影した)



仙台からの帰り道、
マンボウ男さんからのメールを受信。
「せのきんさんがパイ○リに食いつきましたぁ」

すかさずせのきんさんからのメールを受信。

「だからぁ、ハチミツプレイってなに?」


私はある重大な事実に気が付いてしまった。
三人のハンドルネーム(コードネーム)は.....偶然にも程があるだろ!?


マンボウ男

せのきん

ちん

並び順はともかく、

ここに、



国際エロ組織

ちんマンきん誕生!
"ちんボウきん"では本物のヘンタイになってしまうよね?


家に帰って来たその日の夜、
家族にこの組織の事は、

話す事は出来なかった。








・・・エピローグ・・・




結成から四日後....。




来た。

ヤツは突然、私の職場にやって来た。

始めは似ている人かと思った。
でも違う。
迂闊にも私は彼の侵入を許してしまったのだ。
目の前にヤツがいる!




来ちまったもんはしょうがない。



その出で立ちはカジュアルさを装っているものの、
きっとポケットの中には、
あの暗殺用の道具が入っているに違いない!
あの時、
写真なんか撮らなければ良かったと真剣に悔やんだ。
殺られる!
ヤラレてしまう!
(汗)!!
殺られる前に殺やれ!
今、目の前に座っているこの男を.....





・・・・・・この記事をレイモンド・チャンドラー・・・・・・
             と
・・・・・・ トム・クランシーの両氏に捧げる ・・・・・・


ザッピング記事はコチラでお楽しみください d( ̄◇ ̄)b グッ♪

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